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死神少女【原稿Ver】 第5話

第5話

「見て。雪が降ってるわ」

パラパラと舞い落ちる白い雪。
白い部屋から覗くその景色は、どこか切なさを感じさせる。

「覚えてる?初めてデートしたときも、雪が降ってたわね。あーあ。外に出られないのが残念ね」

返答はない。
私は明るく努めた声で続ける。

「でも大丈夫。雪の降る日なんて、別にこれから何度だって来るわ。その時に出かけられればいいもの」
「……」

そう。今じゃなくても。
いつか、出かければ良い。

「ね?ユウタ」
「……」

病院のベッドの上。
動かぬままの旦那は、目を閉じたまま。

4年間、ずっと。目を閉じたまま。

いつか。

そう、いつか。出かけられればいいのだ。

そのいつかが、来れば。

※ ※ ※

「さむぅ」(死神)
「お前寒いとか言う概念あったんか」
「失礼な!私を何だと思ってるんですか!」
「死神だろ」
「死神が寒いとか言ってちゃいけないってんですか!」
「むしろ体温とかなさそう」

俺は金井 ジュン。
夢と希望がないこと以外は、その辺に居るごく普通のフリーター。

そして隣の漆黒コーデ女は、死神。
寿命と引き換えに願いを叶える力を持っている。

今日は休みの日。
特に理由もなく外を歩いていたら、雪が降っていた。

「なんでよりによってこんな日に散歩なんかしてやがるんですかジュンさんは」
「いいじゃないか、雪。テンション上がる」
「はあー。こんなん雨と変わりませんよ。実質水分が降って来てるんですから。全くもう」

ロマンの欠片もないやつだ。
尤も、死神にロマンが欠片でもあるほうがおかしいか。

「見て御覧なさい。周り誰も歩いてないじゃないですか。ジュンさんだけですよ」
「その甲斐もあってお前とこうして堂々と話せてるんだろ」

俺以外、特定の人間を除いてコイツの姿は目に見えない。
端から見れば俺は、誰もいない空間に向かって話している頭のおかしい人間だ。

「最近はブルートゥース通話流行ってますから、そんなおかしく見られませんよ。技術の進歩に感謝してください」
「お前割と人間事情に詳しいよな」
「現代っ子なので」
「何歳?」
「女性に年齢を聞くなんて!!」
「はいはい」

ちょっと前まで寿命800年とか言ってたような奴が何を今更。

「……と、そんなこと言ってたら仲間がいたぞ」

前方。
一人の女性が雪の中を歩いている。

「はー。あの人もお馬鹿の一人ですか」
「……どこかに用事があっただけだろ。決めつけるな」(ボソボソ声で)

一人、そして、買い物袋とかぶら下げていないところを見るとお見舞い帰りか何かか。
確かすぐ近くに大きな病院があったはず。

「……」

ふと、女性の視線が此方に向いた。
なんだろう。きまずいな。
微妙に視線を逸らして俺は歩き続ける。

すれ違う。
彼女はすれ違いながらも、ジッと此方を見ていた。
なんだか、変なものを見るような目で。

「……なんなんだ。俺、おかしな格好でもしてたか」(ボソボソ声)
「うーん、ジュンさんは別にしてませんね」
「だよなあ」
「してたのは、私のほうでしょうか」
「え」

黒い服、黒い髪、黒より濃い、闇の瞳。
そして、背中から生える漆黒の翼。

誰が見ても、奇異な見た目をしている少女。
『見えるのならば』、誰しも凝視してしまう見た目の少女。

「ねえ、ジュンさん」
「……」
「死の匂いが、します」

※ ※ ※

(サトミ視点)

……なんだったんだろう、アレ。
コスプレ?
その割にはリアルな翼だったけど……。なんなら動いてたし。

ハロウィンは……、とっくに終わってるはず。
まあ、いいや。関わらない方が良さそ――

「こんにちはー」(バサっと空中から突然現れる死神)
「ひやぁぁあぁ!?!?」(サトミ)
「何かお困りでしょう?」
「と、とととと、ととと」
「都?ここは県ですよ。都はお隣です」
「と、と、とんで、と、ととと飛んでる!?」
「ふふふ。ワイヤーアクションです」
「え、そうなの?」
「そうです。最近の技術力凄くないですか?」
「ほ……、なーんだ。じゃあ、安心」
「嘘です」(急に翼をバサバサさせる)
「きゃあぁあぁぁ!?」

な、なに?なんなの?
急に翼の生えた少女が目の前で飛んで、私に話しかけて、ついでによくわからないジョークもつぶやいて、何がどうなってるの!?

「私、困った人のところへ舞い降りる、天使でございます」(死神)
「て、天使……?」(サトミ)
「そーですっ!いかにも天使っぽいでしょう!?」
「いや、どちらかと言うと悪魔……」
「何か言いました?」(巨大なカマを取り出しながら)
「いえ、何も」

全力で悪魔だ。

「こ、困った人のところへ舞い降りるって……」
「そのまんまです。何かお困りじゃないですか?」
「……困った、こと」

目の前で起こっている超常現象に本来理解が追いつかないはずなのに、目の前の自称天使が随分マイペースに話し続けるせいで、いつの間にか私は普通に応対をしてしまっていた。

「と、特にないです」
「ないわけないんです!!」
「ひぃ」
「私が現れたということは何かあるはずなんです!!さあ!さあ、さあ!!どうぞ遠慮なく!!」
「ひぃぃ」

※ ※ ※

(ジュン視点)

「……何やってんだか」

いきなり翼を広げたと思ったら、死神はあの女性の元へ行ってしまった。
死の匂い、か。
彼女もまた、死神を必要とする人間なのかもしれない。

※ ※ ※

(サトミ視点)

「……んー」(寝起きのサトミ)

……なんだか、悪い夢を見ていたような気がする。
病院帰り、どういう風に帰ってきたか最早思い出せない。
思い出せないということは、思い出す必要がないのだろう。
まあ、いい。とりあえず朝食の準備でも――

「おはよーございます」(死神)
「きゃあああああ!!!」(気絶するサトミ)
「……おやすみなさい」

※ ※ ※

「それで、お名前は?」(死神)
「……サトミ」
「良い名前ですねー」
「普通だと思うけど」

もしかしたらまだ夢の中なのだろうか。
それにしては随分現実感がある。
昨日出会った自称天使は、何故か当たり前のように私の部屋に鎮座し、私の作った朝食を勝手に食べていた。

「……」(サトミ)
「おや、どこかでかけるんですかー?」
「……そうよ」
「付いていきますねー」
「ご勝手に」

どうせ断っても付いてくるんだろう。
何だろう。見た目は明らかに異様だけど、彼女の話し方や雰囲気もあってか怖さはない。
私は不思議なほど自然に、私に付きまとう彼女の存在を容認していた。

※ ※ ※

「病院ですか」(死神)
「そう。旦那が入院してるの」
「なるほど」

「ユウタ、おはよう!」(サトミ)
「おじゃましまーす」(死神)
「今日も寒いねー。でも、もう雪は昨日でやんじゃったわ。残念」
「……」(死神)
「さて、とりあえずテレビでもつけよっか。今日は何か面白いニュースやってるかな?」
「……」(死神)

いつものルーティン。
私とユウタの大事な時間。

「……あの」(死神)
「なに、どうしたの?」(サトミ)
「旦那さん……、寝てるんですか?」
「そう。寝てるの」
「おきませんね」
「4年間、ずっと寝てるからねー」
「4年間……」
「ま。その内、起きるわよ」
「そう、ですか……」

そう。きっと。
その内、起きる。
だって、寝ているだけなんだから。

※ ※ ※

「それじゃ、そろそろ帰るね。また明日ね」(サトミ)

夕方になり、私は病室を出る。
いつもの帰り道。
雪は降っていない。
ただ、今日はもう一人いる。

「……」(死神)
「どうしたの。黙って」
「……いえ。毎日お見舞いを?」
「仕事がない時は、基本的にね。だって、夫婦だもの」
「……」
「夫婦なんだから一緒に居るのが当たり前。そうでしょ?」

そう。
8年前に初めてデートして、6年前にプロポーズされて、5年前に入籍して。
私たちは出会ったときから、ずっと一緒だった。
そして、これからも、それは変わらない。

「……大変じゃないですか?」(死神)
「馬鹿いわないで。大変なわけないわ。愛する人の側にいられることの、何が大変なの」

そう、変わらない。
これからも。
今までと何も、変わらない。
ただあの人と共に人生を歩むだけ。

「そうですか」(死神)

自称天使はそれ以上、何も言わなかった。
ただ黙って、私の後ろを付いて歩く。

「……雪は降ってないけど、今日は寒いわね」(サトミ)
「……ええ」(死神)

私が何か言うと、彼女は返事をしてくれた。

「早く家に帰って、暖かいコーヒーでも飲みたいわ」(サトミ)
「賛成です」
「……あなたの分も用意しなきゃいけないの?」

彼女と二人で、寒空の下を歩く。
言葉を交わして、共に帰路につく。

どうしてだろう。

少し、泣きたくなる、帰り道だった。

※ ※ ※

4年前。
事故に遭い、病院に運ばれたユウタ。

『意識が戻る可能性は低いでしょう』。

担当の医師は私にそう告げた。

『あなたはあなたの人生を歩んでいいんですよ』

義母が、声を震わせ、涙を堪えながら私にそう言った。

『私の人生はここです』

私は、そう答えた。

『ユウタと共に生きると誓いました。ここが私の人生です』

意識が戻らなくても。
言葉を発さなくても。
彼の肉体は、確かに生きて、そこにある。

だから私は、彼と――

『見て、サトミ。雪だよ』(初デートユウタ。回想)

『なんか、雪ってテンション上がるよね!』(ユウタ)
『えー、私、寒くなるから嫌だなあ』
『君はロマンがないなあ。雪の冷たさは、むしろ心地いいよ』

「……」(ベッドで目が覚めるサトミ)

夢を、見ていた。

9年前の、夢。
あの人と、初めてデートをしたときの夢。

ここしばらく、見ていなかったのにな。

※ ※ ※

(サトミ視点)

「……残念ですが」(医者)

いつものように病院へ行くと、ユウタの担当医師に彼の状態を告げられた。

植物状態の人間の生存期間は、平均して2〜5年。
既に身体の状態は相当に悪く、今後正常な機能を取り戻せる可能性はほとんどない。
覚悟をしておいてください――、と。

「――だって、ユウタ」(サトミ)
「……」(ユウタ)
「でもね、ごくまれに意識が回復する人だっているの。だから大丈夫。私、ずっと待ってるから」
「……」
「いつか、ユウタと一緒に外に出て、デートして、一緒にご飯食べて……」

そう、いつか。

「ううん。外に出られなくても良い。ここで、病室で一緒にご飯を食べて……」

いつかが、来れば。

「ご飯食べなくてもいいよ。何か話してくれるだけで良い」

もし、例えそのいつかが来なくても、何も変わらない。

「目を開けて、私を見てくれるだけでも、全然いいよ。それだけで、私、幸せ」

この人と共に、人生を歩んでいくだけ――。

「幸せ、なんだよ……」

共に……。

『早く家に帰って、暖かいコーヒーでも飲みたいわ』
『賛成です』
『……あなたの分も用意しなきゃいけないの?』

歩いているのは、私、だけ?

「やだ……。やだよ、ユウタ……」

「お願い。少し、何か、反応してくれるだけでいいの」

「私を、一人にしないで……」
「サトミさん」(死神)

「っ!」

振り返ると、いつの間にか少女が立っていた。

黒い瞳を、更に暗くさせて、ジッと私を見ている。

「そ、そうだ……!あなた、私が何か困っているんじゃないかって、言ってたわよね!」
「……」
「こ、困ってる!私、困ってるの!」
「……」
「お願い、この人を治して!このまま、彼が死んじゃうなんて、嫌!」
「……」
「もし、彼が戻ってくれるなら――、私、明日死んだっていい!」
「……そうですか」

出会ったときの明るさはどこへ消えたか。
少女は暗い声でそう答えると、静かに横たわるユウタへ目を向けた。

「……残念ですが、それは無理ですね」
「そ、そんな……」
「叶えられない願いも、あります」

「ですが――」
「え?」

少女は、ジッとユウタを見つめる。
表情を変えないまま、ジッと、彼を見つめる。
そして、ゆっくりこちらに向き直ると、告げた。

「叶えられる願いも、あります」

※ ※ ※

「ねえ、ユウタ」(サトミ)

病室。
窓を指差しながら、私は彼の名を呼ぶ。

「なんだい」(ユウタ。病院のベッドに腰掛けるサトミの手を握っている)

ユウタは私の手をぎゅっと握り、優しい笑顔を浮かべていた。

「外見て、雪、降ってる」
「ホントだね」
「早く、外に出て一緒に歩きたいわ」
「サトミ、雪嫌いって言ってたじゃないか」
「そうだったかしら?」
「適当だなあ」
「いいでしょ。別に。外に出られるようになったら、二人でのんびり雪の中を歩くの。のんびり。ただ、意味もなく」
「……ね、サトミ」
「ん?」
「一つだけ、約束して欲しいんだ」
「なにを?」
「これから何があっても、君は幸せになるって」
「どうしたの、急に」
「いいから」
「大丈夫。私は幸せよ。今も、そして、これからも。ユウタさえ、いれば」
「……そうか」
「なによ」

「じゃあ、大丈夫だね」
「え?」
「俺は、ずっと、君の側にいるよ。いつまでも、ずっと」

※ ※ ※

(サトミのアパート)

「……ん」(ベッドで寝起きのサトミ)

夢を、見ていた。

どんな夢かは、最早思い出せない。

でも、なんだか、とても幸せな夢だった気がする。

「……」

朝食を用意して、食べる。
私は適当に出かける準備を済ませると、靴を履いて外に出た。

※ ※ ※

(ジュンのアパート)

「なんだ。帰ってきて早速、浮かない顔してるな」
「ええ」
「それで、願いは叶えたのか?」
「はい」
「じゃあ――」
「ユウタさんの願いを、叶えました」
「え?」

動かぬ彼。
口も聞けぬ彼。
意識が戻らないと言われていた彼は、その身動きできない身体の中で4年間ずっとサトミさんのことを見続けていた。

「契約する資格のある人間であれば、その人の意志は私に届きます」
「……ユウタさんは、何て?」
「自分を死なせて欲しい。そして――」

「サトミさんの残り寿命で、彼の身体を健康にすることは不可能でした。
加えてユウタさんの残り寿命はあの時点で3ヶ月。
身動きも取れず、もう間もなく死にゆく身体で彼が望んだことは――」

「自分に関する記憶を、全てサトミさんから消して欲しい、と」

※ ※ ※

「どうもー」(死神)
「あら」(サトミ)

アパートを出てすぐのところで、自称天使が片手を挙げて私に挨拶をした。

「なに?待ってたの?」(サトミ)
「まあ、そんな感じです」
「別にいいけど」

少女と一緒に歩き始める。
なんだろう。不思議だ。
この子と知り合いだということはわかるのに、どういう経緯で知り合ったか、思い出せない。

「どこへ行くんですか?」(死神)
「うーん……」

思えば、どうして外に出たのだろう。
なんとなく、外に出たはいいものの、出かける目的地もないはずだ。

「寒……」(サトミ)

外は雪が降っていた。

――雪は、嫌いだ。

寒いだけだから。

※ ※ ※

(ジュンのアパート)

「な、なんで、そんなこと……」
「それしか、なかったんでしょうね」

4年間、ずっとサトミさんを見てきた。
何も出来ない身体で、何もしてやれない身体で、顔は笑って、心で泣き続けた彼女の姿を、ずっと。

願いが叶うなら、せめて。

自分のことを忘れて、新しい人生を生きてほしい。
そんな前向きな言葉すらかけられないから、それならいっそ本当に記憶から自分を消して欲しい。

「記憶って、すごい曖昧な存在なんですよ。だから、それを変えたり、消したりするのって、簡単に叶えられちゃうんです」

たとえそれが、どんなに大切な、思い出であったとしても。

「……そう、か」(ジュン)
「……」
「自分のせいで苦しい思いをして欲しくないっていう気持ちは、確かにわかるけど……」
「そうですね」

「でもね、ジュンさん」

「私は、取引して後悔したのはこれがはじめてかもしれません」

※ ※ ※

「私も全く同感です」(死神)
「でしょ?」
「でも、雪が降るとテンションが上がる人も居るらしいです」
「へえ……」

雪が降り続く。

雪の降る中、私は歩く。

私の隣を、少女も歩く。

雪の降る中を、私は二人で歩いていた。

なぜだろう。

随分、懐かしい気がした。

「どうしました?」
「え?」
「泣いてますよ」

※ ※ ※

(ジュン視点)

「例え、サトミさんが強い悲しみと絶望に襲われたとしても」

「例え、ユウタさんが大きな悔いと未練を残して逝くことになったとしても」

「それでも、ユウタさんを覚えていて欲しかった」

「悲しみも辛さも絶望も、全て、サトミさんがユウタさんを深く愛してきた過去の証明です」

「そして、ユウタさんがサトミさんと共に生きてきた証明なんです」

「だから――、私は後悔してるんです」

「取引、しなきゃ、よかったなって」
「……」(ジュン)
「でもね、ジュンさん。私は、死神ですから」

※ ※ ※

「あれ?なんでだろ、おかしいな」(サトミ)
「……」
「変ね。悲しいことなんて何もないはずなのに……」
「……サトミさん」
「え?」
「歩きましょ。二人で。雪の中」
「……」
「雪、嫌いなもの同士ですけど。少し、お散歩、しましょう」
「……そう、ね」

※ ※ ※

「持ちかけられた取引を、叶えることしか出来ない」(死神)

「寿命を奪って、人を死に至らしめる。それが、私たち、死神なんです」
「……あのさ」
「?」
「サトミさんの辛さや絶望が、ユウタさんを強く愛してきた証明なら」

「ユウタさんが命を懸けて、その辛さや絶望を取り除いてあげようとしたことも、またサトミさんを強く愛してきた証明だよ」
「……」
「だから、今彼女が前を向いて歩いていけているのは、間違いなく、ユウタさんがいたからなんだ」
「……ジュンさん」
「お前は、何も間違っちゃいないさ。勿論――」
「正しくも、ないですけど、ね」

※ ※ ※

「なんか、いいわね」(サトミ)
「え?」
「新しい雪の上を歩くのが、よ」

まだ何者にも踏まれていない新雪は、踏めば小気味いい音が鳴り、私の足跡をくっきりと残す。

雪はますますその勢いを増していく。

何度も私が踏み歩いた道を、真っ白に覆いつくして、新しい道へと変えていく。

「少し、雪が好きになれたかも」(サトミ)
「それはよかったです」
「――もう、いいわ」(サトミ)
「え?」
「もう、ついてこなくて大丈夫よ」
「……」(死神)

私は、もう大丈夫。

『じゃあ、大丈夫だね』(回想ユウタ)

一人で、この道を、歩いていける。

だって――

『俺は、ずっと、君の側にいるよ。いつまでも、ずっと』(回想ユウタ)

誰かに、そう言われた気が、するから。

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